さて、これまで見たアニメの中でも1.2を争う超ハイクオリティーアニメと言えば、やはり、攻殻機動隊でしょう。
舞台は西暦2029年、近未来の日本で、ネットワークやIT技術が今よりも格段に進化した時代。人々のほとんどは「電脳化」と呼ばれる施術により脳髄を「電脳」に載せ替えることにより、パソコンや携帯端末などのインターフェースを解せず、直接ネットワークにアクセスできる様になっていた。
技術の進歩に伴い、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、などが共生するなか、より複雑になっていくテロや汚職などの犯罪を事前に察知し、被害を最小限に防ぐ攻性公安警察組織「公安9課」の活動を描く。
このアニメは、とにかくリアリティーがすごい。現在の延長線上にあり得そうな設定が目白押しなんです。先ほどの電脳化以外にも、体の一部をサイボーグ化して身体能力を高める「義体化」、第3次核大戦・第4次非核対戦を経て、核汚染された地球を浄化したマイクロマシン散布による放射能除去技術「日本の奇跡」、戦争の経過を物語る半分海に沈んだ都庁ビルなど、あってもおかしくない描写や現実に存在する場所の未来の姿が随所に盛り込まれています。
また世界統一通貨として劇中で使われている通貨の一つがが「YES」と呼ばれるものなんですが、これは¥€$と書きます。わかりますか?円・ユーロ・ドルでYESなんです。こんな感じに作り込みがリアルで細かい。これが攻殻機動隊の魅力の一つです。
アニメは第1部・第2部(2ndGIG)・第3部(長編「Solid State Society」)これ以外に劇場版が2作。劇場版は監督が違うため少し暗めでアンニュイな感じになってますが(こっちもお勧めですが、まずはTVアニメ版から!!)
第1部は超A級ハッカー「笑い男」と公安9課の戦いを描いたもので、全編を通してテーマになってくるのが、J・D・サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」という小説。第一部のキーパーソンである笑い男は言動にしばしばこのライ麦畑でつかまえての主人公ホールデンコールフィールドの言葉を引用する。有名な笑い男のマークの周りにかかれている言葉も、ライ麦の名台詞で、攻殻機動隊第1話で草薙素子の台詞にも使われています。
↑↑↑笑い男マーク
I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes.
「僕は耳と目を閉じ、口を噤んだ人間になろうと考えたんだ」
実際にこの小説は、ケネディ大統領暗殺したとされるリー・ハーベイ・オズワルド・ジョンレノンを射殺したマーク・チャップマン・ レーガン大統領を狙撃したジョン・ヒンクリーらが、愛読していたと言うことでも有名な小説。特に波乱に満ちたストーリーなどはなく、思春期の初年のある時期の出来事が淡々とかかれ、その中に、およそヒーロー像とはほど遠いエゴと甘さ満載の主観的感想が語られるというだけのものだが、何故か癖になる。これも是非読んで頂きたい。
第2部は自分たちの思想を突き通す個別の11人と裏でそれを操る内閣の黒幕と戦いを描く。1部よりもさらに重厚で良くできた内容だが、少々難解なので、繰り返しの視聴をお勧めする。
第3部は長編で第2部の数年後の話。これも1部・2部で世界観をしっかり学んでからでないとよくわからないまま終わってしまい、結果濃厚でよく作り込まれたストーリーを堪能できなくなるので、順番に見ることをお勧めします。
また、前編通してのテーマとして、「人間にしかない魂という概念」というものがあります。
義体化・電脳化によって、外側の入れ物や記憶・思考などは複製・書き換えが可能となった時代。それでも、元々人間であったものではなく、0から作られたアンドロイドやサイボーグには無いものが一つだけあった。自分を自分たらしめる要素である自我や意識、魂とでも呼ぶべきの概念を「ゴースト」とよぶ。
肉体も入れ物として入れ替え、必要な記憶はコピー可能。こうなってしまうと自分はいったい誰なのか?となってしまうでしょう。そのときに自分は見た目も中身も変わっても自分であると言い切れる根拠がこのゴーストです。
ロボットにはゴーストは宿らないのか?これが隠れたテーマでもあります。
公安9課に配属されている思考戦車「タチコマ」も日夜このことを考えています。
自己犠牲の気持ちや、個性は発生するのか?
その様子やタチコマの成長が、攻殻の「萌え」部分を担っています。(ストーリーがシリアスな分、タチコマの萌えが際立ちます。)
また、2ndGIG終了時点でタチコマたちによって、あなたはある童謡が聞けなくなることでしょう。それを聞く度に今でも悲しくなります。
さて、長々と語ってしまいましたが、まだまだ語りきれません。
何回・何周見ても新たな発見があります。作り込みがリアリティーはもはや神の領域です。
是非見て下さい。意味がわかるまで何度も見て下さい。
↑第1部の総集編。まずはこれで全体像をつかんでみては...
↑こちらもお勧めです。読めばわかります。常にカバンに入れときたくなります。
俺的評価 ★★★★★ (見れば見るほど違った発見。何度見ても飽きない。文句なし最高。)